顧客概要
東京都/49歳・男性/父親の財産管理と兄妹間の相続トラブル回避を希望
ご相談の背景・経緯
N様のお父様は兵庫県神戸市で一人暮らしをされており、長年にわたってご実家および貸土地の管理をされてきました。しかし、近年は高齢による体力・判断力の低下が見られ、契約更新や不動産管理に関する業務が負担となってきていました。N様は東京都にお住まいで、頻繁に実家へ足を運ぶことが難しく、父親の資産をどう管理・承継すべきか悩まれていました。
特にN様が懸念されていたのは、以下の2点です。
ひとつは、現在すべての不動産が父親名義のため、息子であるN様が貸土地の契約更新や管理業務をスムーズに行えない点。もうひとつは、相続発生後に妹様と不動産を共有することで、売却や管理の判断が分かれ、兄妹間でトラブルになる可能性がある点でした。
「父が元気なうちに、財産管理の体制を整えておきたい」「兄妹で争うことなく、きちんと財産を分けたい」という強い想いから、家族信託に詳しい専門家をインターネットで調べ、当事務所へご相談いただきました。
専門家のポイント解説
本件では、遠方に住むN様が「父の財産を安全に管理したい」というご希望と、「相続時に妹と公平に承継したい」という想いを抱かれており、さらにご家族としての根本的な意向として「実家に関する財産は血縁関係のある家族に承継させたい」というお父様の考えがありました。N様もその想いを尊重し、同様の方向での信託設計を望まれていました。
このような複数の課題と希望を同時に叶える手段として、私たちは「受益者連続型家族信託」のスキームをご提案しました。
一般的な遺言や成年後見制度では、財産の「管理」と「承継」をあわせて設計することは難しいという現実があります。遺言は死亡後にしか効力が発生しませんし、成年後見制度では本人の判断能力が低下した時点からの制限的な管理にとどまります。
そこで、今回の家族信託では、お父様を委託者兼受益者、N様を受託者とし、信託契約に基づいてN様が不動産の管理を担う仕組みを構築しました。これにより、貸土地の契約更新や管理などを、法的な権限をもってN様が行えるようになり、遠方からでも実質的に支障のない管理体制が整いました。
また、承継の面では、将来的にお父様が亡くなった後は、N様と妹様がそれぞれ受益権を2分の1ずつ保有することで、公平に利益を享受できる形としました。さらに、N様に万が一のことがあった場合には、受益権は妹様に引き継がれるように設計しています。これは、お父様が「血縁のある家族に実家を承継してほしい」と考えていたことを踏まえたものです。家族の歴史や想いが詰まった財産を、他人に渡さず、血縁の中で引き継ぎたいという価値観は、相続の場面で非常に大切です。
受益者連続型家族信託を活用することで、
・生前からの柔軟な資産管理
・兄妹間での公平な利益分配
・そして家族の意志を尊重した承継設計
を一つの仕組みで実現することができました。
形式だけでなく、「家族の思い」にしっかりと寄り添った信託設計ができた点が、今回の事例の最大のポイントであったと考えています。
お客様の声
父の高齢化にともなって、不動産の管理や将来の相続に不安を感じていたため、家族信託を活用した対策をしたいと考えるようになりました。中でも「実家に関する財産は、父の意向通り、血縁で承継させたい」という思いが強く、それを実現できる制度として、家族信託を選びました。
実際にご相談したところ、私たち家族の状況や気持ちを丁寧に聞いてくださり、それに合わせた信託設計をしていただけたことにとても感謝しています。管理の負担を軽くできただけでなく、父の意思や妹との公平性、そして私に万が一のことがあったときのことまで考慮した設計にしてもらえたので、先々の不安もかなり軽減されました。
「何を、誰に、どのように承継するか」を事前に家族で共有し、それを制度としてきちんと整えられたことで、安心感が全く違います。自分たちにとって必要な制度を、専門家のサポートを受けながらしっかりと形にできたことは、大きな成果だったと感じています。