
廣木 涼
[相続終活のリアル]
相続専門の司法書士廣木涼です。
相続手続きにおいて行方不明の相続人がいる場合、戸籍を取って調べる必要があるというお話をしましたが、「戸籍って誰でも取れるのですか?」という質問をよくいただきます。
結論からいうと、誰でも他人の戸籍を取れるわけではありません。個人情報ですので、制限があります。ただし、相続手続きの場合は必要な範囲で、他の相続人の戸籍も取ることが可能です。相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの全ての戸籍が必要になりますので、窓口でその目的を示せば取得できます。
実は戸籍には歴史があり、現在皆さんがイメージする「戸籍謄本」とは異なる形式の戸籍が複数存在します。戸籍法は5回ほど改正されており、特に昭和の前半に生まれた方の戸籍を辿ると、5種類くらいの異なる形式の戸籍が出てくることがあります。
昔の戸籍では、おじいちゃんの戸籍に家族全員が入っていました。これは「家制度」の名残で、かつては家長が代々家を守っていく相続制度があったためです。基本的にはお父さんが亡くなったら長男が全財産を相続し、配偶者すら相続権がありませんでした。
今でも地主さんなどでは、代々こうした形で財産を承継している家もありますが、現在の法律では子どもは平等に相続するように変わっています。ただ、「長男だから」という考え方は今も残っていることがあります。
戸籍は結婚や分家などによって変わっていきます。生まれた時は親の戸籍に入り、結婚すると配偶者と新たに戸籍ができます。結婚していなければ親の戸籍に入ったままということになります。
しかし、戸籍だけでは現在の居場所は分かりません。ここで戸籍と住民票の違いが重要になってきます。
私も最初この業界に入ったとき、戸籍と住民票の違いから勉強を始めました。この違いを理解することは相続手続きにおいて非常に重要です。
多くの方は本籍地と住所地が異なりますが、この二つをどうやって繋げるかというと「戸籍の附票(ふひょう)」というものがあります。窓口で「附票必要ですか?」と聞かれたことがある方もいるかもしれませんね。
附票とは本籍地と住所地を繋ぐものです。相続手続きでは非常に重要な役割を果たします。特に行方不明の方を探す際には、戸籍の附票を見ることで最終住所地を確認できます。
附票は住民票と違って履歴が追えるのが特徴です。ただし、住民票の変更手続きをしていないと附票にも新しい情報は載りません。それでも、附票で追える範囲で最後の住所地を特定し、そこに連絡を取ることは可能です。
また、不動産などの名義が昔の住所のままになっているケースもあります。新しく家を購入しても、名義は古い住所のままということはよくあります。さらに複雑なのは、現在の住所、自宅の住所、施設の住所など複数の住所がある場合です。名義変更の際には住所と名前が一致しないと本人と認められないため、こうした情報の整合性が重要になります。
相続手続きでは、こうした戸籍や住民票の仕組みを理解し、適切に書類を集めることが必要です。
相続、終活に関する情報発信を通して、トラブルになる前に気を付けた方がいいことを皆さまに知ってもらい、ご自身やご家族が困らないような対策をするきっかけになってもらえればと思っています。
廣木
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