お役立ち情報

[相続終活のリアル]

【相続終活のリアル】#20遺言書だけでは不十分 〜認知症に備える家族信託と任意後見〜

  • 投稿:2025年04月24日
  • 更新:2025年05月08日
【相続終活のリアル】#20遺言書だけでは不十分 〜認知症に備える家族信託と任意後見〜

相続専門の司法書士廣木涼です。

遺言書があれば安心?その盲点とは

遺言書があれば相続トラブルを避けられると考えがちですが、実は遺言書だけでは対応できない問題があります。遺言書は亡くなった後の財産承継についてのみ効力を持ちますが、亡くなる前にも様々な問題が生じる可能性があるのです。

特に注目すべきは、健康寿命と平均寿命の差です。女性の場合、この差は10年以上にもなります。つまり、健康なうちに遺言書を書いても、実際に亡くなるまでの間に健康を害してしまい財産構成も変動する可能性が高いのです。この期間の財産管理についても対策が必要です。

認知症による財産管理の困難

認知症になると自宅での生活が難しくなり、施設への入所が必要になるケースも増えています。しかし、施設費用は少なくとも月に15万円から20万円程度かかり、年金だけでは賄えないことが多いです。

そうなると、親の貯金を使うことになりますが、それも底をついてしまうと、実家を売却して資金を確保しようという判断になることがあります。しかし、認知症の方は契約行為ができないため、自宅の売却ができなくなってしまいます。このような事態を避けるためには、事前の対策が必要です。

家族信託と任意後見の活用

認知症になる前に備える制度として、「家族信託」と「任意後見」があります。これらを活用することで、認知症になっても財産管理や必要な契約行為を行うことができます。

任意後見制度とは

任意後見制度は後見制度の一種で、元気なうちに自分の代理人となる後見人を選んでおく制度です。家族を後見人に指定することも可能です。認知症などで判断能力が低下した場合、この契約に基づいて選んだ人が後見人になります。

任意後見契約を発効させるには裁判所への申立てが必要で、司法書士や弁護士がサポートしてくれます。この時、裁判所から「後見監督人」(通常は弁護士や司法書士)が選任されます。後見監督人は後見人が適切に役割を果たしているかを監督する役割を担います。

通常の成年後見制度では、弁護士や司法書士が後見人になると月に2万円から6万円の費用がかかりますが、任意後見制度を利用して家族が後見人になり、弁護士等は後見監督人になる形にすれば、費用を5000円から3万円程度に抑えることができます。

家族信託とは

家族信託は裁判所の関与なく、元気なうちに自分の財産を信頼できる家族に託しておく制度です。例えば、自宅の管理を息子に任せ、必要な場合は売却して施設費用に充てるといった取り決めをあらかじめ行っておくことができます。

財産ごとに管理者を分けることも可能で、例えば「自宅は長男に」「預金は長女に」といった形で財産管理を分散させることもできます。また、自宅だけを信託の対象にするといった柔軟な対応も可能です。

まとめ:元気なうちの準備が大切

これらの制度は、問題が発生してから対応するのでは遅すぎます。元気なうちに司法書士や弁護士に相談し、家族信託や任意後見契約を結んでおくことが重要です。

遺言書は亡くなった後の財産分割のために必要ですが、認知症などで判断能力が低下した場合の財産管理には別の対策が必要です。家族が困らないよう、また財産を有効に活用できるよう、これらの制度の存在を知り、適切に準備しておくことをお勧めします。

相続、終活に関する情報発信を通して、トラブルになる前に気を付けた方がいいことを皆さまに知ってもらい、ご自身やご家族が困らないような対策をするきっかけになってもらえればと思っています。

廣木

廣木

関連記事
【相続終活のリアル】#20遺言書だけでは不十分 〜認知症に備える家族信託と任意後見〜

お問合せ

ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問合せください。
専門スタッフが丁寧に対応いたします。

対応地域

日本全国

お気軽に
ご相談を!