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[相続終活のリアル]

【相続終活のリアル】#12相続人に認知症の方がいる場合の遺産分割—法的手続きと家族の現実

  • 投稿:2025年04月24日
  • 更新:2025年05月08日
【相続終活のリアル】#12相続人に認知症の方がいる場合の遺産分割—法的手続きと家族の現実

相続専門の司法書士廣木涼です。

近年、高齢化の進展と平均寿命の延びに伴い、相続人の中に認知症の方がいるというケースが増えています。今回は、そのような状況における遺産分割のトラブルと対応策についてお話しします。

よくある相続トラブルのケース

最も多いケースとしては、お父様が亡くなり、相続手続きを行おうとした時に、残されたお母様が既に認知症であるというパターンです。このような状況では、遺産分割協議が法的に困難になります。

認知症の度合いにも様々あり、軽度であれば自分の名前や生年月日、住所などを答えられ、遺産分割協議を理解できる場合もあります。しかし、重度になると自分のことも分からなくなり、子どものことも認識できなくなることもあります。

特に深刻なのは、親との接触が少なく、気づいたら親が認知症になっていたというケースです。お父様が亡くなった後、相続手続きを放置しているうちにお母様も認知症が進行し、お母様が施設に入所したが、自宅がお父様名義のまま空き家になっているという状況も珍しくありません。

法的手続きの複雑さ

このような場合に遺産分割協議をしようとすると、法的には成年後見人の選任が必要になります。裁判所への申立てには、司法書士などの専門家のサポートが必要になる方がほとんどです。申立てには本人の財産状況などの詳細な書類が必要で、書類を集めるのが煩雑でなかなか進まないという方もいらっしゃいます。

後見人の選任にも課題があります。最終的には裁判所の判断にはなりますが、認知症のお母様のために息子さんが後見人になることも可能です。ただ、遺産分割において利益相反の問題が生じます。息子さんも相続人である場合、自分が多くの財産を得ようとすれば、認知症のお母様の取り分が減るためです。このような場合、特別代理人を立てるなど、さらに煩雑な手続きが必要になります。

裁判所による法定相続分の原則

裁判所が関与する後見制度では、基本的に法定相続分に従って遺産分割を行うことが原則となります。この原則は認知症の方の権利を守るためのものですが、必ずしも家族全体の最適な解決策とはならないことがあります。

例えば、お母様があまり財産を相続しない方が将来の相続税対策になるなどの事情があっても、法律上は法定相続分を尊重する必要があります。そのため、本来であれば後見人を付ける前のお母様も元気な段階で、家族間で円満に話し合いができることが望ましいのです。

事前対策の重要性—遺言書の活用

相続トラブルを避けるためには、タイミングが重要です。お父様が亡くなった時にお母様が既に認知症だった場合、お父様が遺言書を残していれば、後見人を付けなくても遺言書に従って遺言執行者が手続きができます。

一方、遺言書がなく、お父様の相続手続きを放置している間にお母様が認知症になった場合は、遺産分割協議をするために後見人の選任が必要になり、法定相続分に従った解決を求められることになります。

まとめ:早期の専門家相談の重要性

裁判所に申立てを行うと、法律の下で公平な解決が図られますが、必ずしも家族の意向や感情を反映した結果にならないことがあります。そのため、なるべく早い段階で司法書士などの専門家に相談し、より良い解決方法を模索することが大切です。

法定相続分が必ずしも家族にとっての「正解」とは限りません。事前に認知症の可能性も考慮した対策を講じておくことで、将来の相続トラブルを防ぐことができるのです。

相続、終活に関する情報発信を通して、トラブルになる前に気を付けた方がいいことを皆さまに知ってもらい、ご自身やご家族が困らないような対策をするきっかけになってもらえればと思っています。

廣木

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