後見人が必要になるタイミング
後見人制度は、認知症などで判断能力が低下した方の財産管理や手続きを行うために利用される制度です。特に以下のような場面で必要性が高まります。
- 相続財産(預金や不動産)を動かす必要がある場合
- 施設利用費などの支払いのために亡くなった配偶者名義の財産を活用する必要がある場合
- 自宅を売却して資金を作る必要がある場合
例えば、お父様が亡くなり、預金の大半がお父様名義のままで凍結しており、認知症のお母様の施設利用費を支払うために預金の引き出しが必要な場合などです。年金収入だけでは施設費用をまかなえず、自宅を売却して資金を作りたい場合も同様です。
遺産分割だけであれば先延ばしにする方も多いですが、資金が必要になった時点で後見人選任の手続きをせざるを得ないケースが多くなります。
後見人選任の難しさ
後見人は裁判所が選任するため、必ずしも家族が希望する人が選ばれるとは限りません。家族は「候補者」として申し立てることはできますが、裁判所の判断次第です。
弊社で対応した事例でも3件の申し立てのうち2件は子どもが後見人として認められなかったケースがありました。その理由として:
- 後見人は本人(被後見人)の代理人であり、本人のためにお金の管理ができるかが重視される
- 自分自身の財産状況も審査される
- 親と同居していて、親の収入に依存している場合などは不適格と判断されることがある
裁判所は「家族単位」ではなく「本人単位」で見るため、本人の財産を守れる人かどうかが重視されます。
専門家が後見人になる場合のコスト
家族が後見人に選ばれないと、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることになります。その場合のコストは:
- 月々2万円から5万円程度の報酬が発生
- 家族内で後見人を立てる場合も、後見人に費用を支払うことは可能だが、裁判所への申し立てが必要
専門家が後見人になると、財産を使うたびに相談が必要になるなど、手続き面でも煩雑になることがあります。
後見人制度のデメリット
後見人制度の主なデメリットとして:
- 一度利用すると基本的に本人が亡くなるまで継続する(認知症の場合、判断能力が回復することは少ない)
- 遺産分割協議が終わっても継続するため、長期間にわたって費用が発生する
- 現状では「遺産分割の時だけ」「売却の時だけ」など、期間限定で後見人を付けることができない
現在は法改正の動きもありますが、まだ実現していません。
まとめ
後見人制度にはメリットもデメリットもあります。自分の状況に合っているかどうかをよく検討し、制度の内容をしっかり把握した上で利用することが大切です。また、後見人をつけたくない場合は、後見人が必要にならないよう、事前に対策を講じておくことも重要です。
相続、終活に関する情報発信を通して、トラブルになる前に気を付けた方がいいことを皆さまに知ってもらい、ご自身やご家族が困らないような対策をするきっかけになってもらえればと思っています。

廣木