顧客概要
旦那様(被相続人)/38歳/会社員/配偶者(35歳)・子供1人(5歳)/総資産:6,500万円(金融資産:預貯金500万円、有価証券・生命保険など3,000万円・不動産:住居3,000万円)
ご相談の背景・経緯
30代の旦那様が交通事故で急逝され、35歳の奥様と5歳の長男が残されました。主な財産は旦那様名義の自宅不動産と預貯金、投資信託です(住宅ローンは団体信用生命保険で完済)。
旦那様が加入していた生命保険金がすぐに振り込まれたため、当面の生活費には困りませんでしたが、後日、預貯金の解約手続きのために銀行窓口へ行ったところ、口座が凍結されました。さらに、解約のためには遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要と告げられます。
しかし、相続人である長男は5歳の未成年です。法律上、親(奥様)と子(長男)が共に相続人となる場合、利益相反の関係にあたるため、親が子の代理人として遺産分割協議を行うことができません。これにより相続手続きが完全にストップしてしまう事態に直面しました。
専門家のポイント解説
未成年の子と親が相続人になるケースでは、利益相反により家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立て、その代理人を交えて遺産分割協議を行う必要があります。これには以下の3つの大きな壁が立ちはだかります。
1. 手続きの煩雑さと時間的ロス
家庭裁判所への申立てには、多くの書類準備と時間が必要です。日々の育児や仕事に追われる遺族にとって、大きな負担となります。
2. 希望通りの分割が困難に
特別代理人は、あくまで子どもの法定相続分を確保する役割を担います。そのため、「今後の生活費や教育費の管理のために、預貯金はすべて奥様が相続したい」といった柔軟な分割案が認められづらく、協議が難航する可能性があります。
3. 計り知れない精神的な負担
生命保険のおかげで当面の生活費に困らなくても、故人が遺してくれた大切な財産を、煩雑な法的手続きなしでは自由にできないという心理的ストレスが遺族に重くのしかかります。
【最大の解決策は「遺言書」の作成】
このような事態を避けるための、最も簡単で効果的な対策が「遺言書」の作成です。
もし旦那様が生前に、「全財産を妻に相続させる」という一文だけのシンプルな遺言書を遺していれば、状況は全く変わります。
遺言書があれば、そもそも遺産分割協議を行う必要がなくなります。当然、利益相反の問題は発生せず、特別代理人を選任する必要もありません。遺言書と戸籍謄本等の必要書類だけで、預貯金の解約や不動産の名義変更を速やかに行うことができます。
「自分はまだ若いから大丈夫」と思っていても、万が一は誰にでも起こり得ます。未成年のお子さまがいるご家庭にとって、遺言書は単なる財産の整理ではなく、残された家族の負担を減らすための大切な準備なのです。
お客様の声
夫が突然事故で亡くなり、悲しみに暮れる間もなく今後の生活への不安が襲ってきました。幸い、夫が残してくれた生命保険のおかげで当面の生活費は確保できたのですが、夫名義の預金を解約しようとしたところ、「5歳の子どもとの間では利益相反になるため、家庭裁判所で特別代理人を立ててください」と言われ、目の前が真っ暗になりました。
日々の育児と仕事に追われる中、裁判所での煩雑な手続きをしなければならず、子どもの法定相続分を確保しなければならないため、今後のために妻である私が全額をまとめて受け取るのは難しいと知った時は本当に途方に暮れました。
もし夫が生前に「妻にすべて相続させる」という遺言書を1枚書いていてくれたら、こんなに苦労することはなかったのだと今になって痛感しています。私たちのように「まだ若いから大丈夫」と思っている小さな子どものいるご家庭こそ、万が一の時に家族が法的手続きで苦しまないよう、早めに遺言書を書いておいてほしいと心から思います。