顧客概要
母親(被相続人)/80歳/不動産賃貸業/配偶者なし・子供3人(うち1人が不動産の後継者)/総資産:5億2,000万円(不動産[貸付事業]4億円・不動産[その他]4,000万円・金融資産[預貯金]6,000万円、[有価証券等]2,000万円)/負債:3億5,000万円/メモ:賃貸併用住宅を保有
ご相談の背景・経緯
父親が亡くなった後、80代の母親が1棟規模の大きな賃貸用不動産と将来活用可能な空き地を保有し、賃貸経営を行っていました。不動産の承継者については、3人のお子様のうち1人に引き継ぐことがすでに決まっており、他のご家族も了承済みでした。また、相続税については顧問税理士と連携して対応を進められている状況でした。
今回のご相談の中心は、相続税対策そのものではなく、今後の不動産の将来運営に関するものでした。具体的には以下の不安を抱えられていました。
築年数の経過により、近い将来に大規模修繕が必要になる。
修繕だけでなく、建替えや空き地への新たな建設も含めた活用判断が迫られている。
多額の費用がかかるため、それに伴う借入れや借換えの判断を誰がどう実行するのか。
母親が高齢であるため、万が一将来的に認知症などで判断能力が低下した場合、賃貸経営に必要な契約や資金調達が一切できなくなるリスクがあります。経営判断が止まらないよう、母親が元気なうちから後継者が実務を動かせる体制を整えておくことが急務でした。
専門家のポイント解説
本件では、「誰に財産を残すか」という相続対策とは切り離し、不動産の管理・運営・資金調達の権限を後継者にスムーズに移行することが最大のテーマでした。当事務所では以下の2つのアプローチで体制を構築しました。
1. 家族信託を活用した経営判断の委譲
母親を委託者(兼 受益者)、後継者となるお子様を財産を管理する受託者とする家族信託を組成しました。修繕、新たな借入れ、借換え、建替えや土地活用の判断に至るまで、後継者が受託者の権限として主体的に実行できるよう信託契約で役割を明確化。これにより、母親の判断能力の有無に関わらず、後継者の判断でタイムリーな不動産経営が可能になりました。
2. 【重要】信託対応が可能な金融機関への借換え・集約
家族信託を用いて不動産経営を行う際、実務上もっとも大きなハードルとなるのが金融機関の融資対応です。信託財産となった不動産に対する融資や管理に対応できる金融機関は限られています。
本件では3億5,000万円の既存負債があったため、将来の大規模修繕や新たな建設(アパート建築など)の資金調達を見据え、家族信託のスキームを深く理解している金融機関へ借入れを切り替え(借換え)、集約を行いました。
信託契約を作るだけでなく、金融機関との関係整理まで踏み込んで対策を行ったことで、後継者が実務面でも資金面でも迷わず賃貸経営を進められる強固な体制が完成しました。
お客様の声
【後継者(お子様)の声】
母が高齢になり、賃貸物件の大規模修繕や空き地の活用についてそろそろ考えないといけないと頭を悩ませていました。財産を私が継ぐこと自体は兄弟間でも合意が取れていたのですが、「もし母が認知症になったら、銀行でお金が借りられず修繕も建替えもできなくなる」と知り、大変焦りました。
専門家の方に相談し、家族信託を使えば母が元気なうちから私が管理や契約の矢面に立てると教えていただき、目の前が開けた思いでした。特に助かったのは融資の整理です。信託物件にお金を貸してくれる銀行が限られているなんて素人には分かりません。将来の修繕や建替え費用を見据えて、信託に理解のある金融機関への借り換えまで全て段取りをつけてもらい、不動産経営の不安がすっかり解消されました。これからは私がしっかりとこの不動産を守り、育てていきたいと思います。