顧客概要
ご本人(被相続人)/80歳/不動産賃貸業/配偶者あり(認知症)・子供2人(1人は近隣在住でサポート、1人は海外在住。家族関係は良好)/総資産:3億円(不動産[貸付事業]2億2,000万円・不動産[住居]3,000万円・金融資産[預貯金]5,000万円)
ご相談の背景・経緯
複数の賃貸用不動産を所有する80代のご本人からのご相談です。現在は認知症を発症している配偶者と二人で暮らしており、近くに住むお子様(一人)が日常的な生活面や各種手続きのサポートを行っています。もう一人のお子様は海外に居住しているため物理的な関与は難しいものの、家族間の連絡や意思疎通は良好に取れている状態でした。
ご本人は「自分に万一のことがあった後、子どもたちに余計な負担をかけず、できるだけ今のうちに整理しておきたい」とのお考えでした。特に以下の点が大きな懸念材料となっていました。
配偶者が認知症のため、本人が亡くなった後、不動産の相続手続きや管理がストップしてしまう。
将来的に発生する賃貸物件の大規模修繕、建替え、あるいは売却といった判断を誰がどう行うのか。それに伴う銀行からの借入れはできるのか。
配偶者の今後の生活費や施設等の介護費用を、どの資産からどうやって捻出するのか。
ご本人としては、財産の使い道に大きな制約がかかる成年後見制度の利用はできるだけ避け、これまでサポートしてくれている近くのお子様に引き続き管理を任せたいという強いご意向がありました。
専門家のポイント解説
本件のように配偶者が認知症であり、かつ不動産賃貸業を営んでいるケースでは、通常の遺言書だけではカバーしきれない不動産の管理・運用と二次相続の課題が生じます。当事務所では、これらを一体で解決できる家族信託をご提案・設計しました。
1. 近くに住むお子様を受託者とする管理体制
ご本人を委託者、実務的な対応が可能な近くに住むお子様を受託者とし、複数の不動産と現預金を信託財産としました。これにより、ご本人の生前はもちろん、万が一のことがあった後でも、お子様の権限で大規模修繕の契約や借入れ、不動産の売却といった経営判断を止めることなく継続できるようになります。
2. 配偶者を守る「生活費・介護費用の確保」
ご本人が亡くなった後(一次相続後)は、認知症の配偶者を利益を受け取る受益者に設定しました。受託者であるお子様が不動産を管理・運用(または売却)し、そこから得られる家賃収入や売却代金を、配偶者の生活費や介護費用として確実に充てる仕組みです。配偶者自身が直接財産を所有するわけではないため、認知症による資産凍結を防ぐことができます。
3. 「二次相続」まで見据えた財産の帰属先の決定
通常の相続では、配偶者が亡くなった後(二次相続)の財産の行方までは指定できませんが、家族信託では「配偶者が亡くなった後は、残った財産を子どもたち(近隣のお子様と海外在住のお子様)で分ける」とあらかじめ契約で定めることが可能です。一次相続から二次相続に至るまでの道筋をすべて事前に整理できたことが、最大のポイントです。
お客様の声
【ご本人様の声】
妻が認知症になり、私が倒れたら残された妻の生活費や、いくつもあるアパートの管理はどうなってしまうのかと夜も眠れないほど心配していました。成年後見制度を使うと、アパートの修繕や建替えでお金を借りることが難しくなると聞き、どうすればよいか途方に暮れていました。
専門家の方に家族信託を提案していただき、近くに住む子どもに今のうちから管理を任せられ、私がいなくなった後も妻の介護費用をアパートの収入から確実に出せる仕組みが作れると知って、本当に救われました。海外にいる子どもも含め、家族全員が納得する形で先の先(妻が亡くなった後)のことまで決められたので、ようやく肩の荷が下りました。
【受託者となる近隣のお子様の声】
日頃から両親のサポートをしていましたが、父に万が一のことがあった際、認知症の母を抱えながら、どうやってアパート経営を引き継げばいいのか不安でした。信託契約の中で私の役割や権限(借入れや修繕ができること)が明確になり、母の生活を守るための道筋が法的に整ったことで、自信を持って両親をサポートしていけるようになりました。