顧客概要
お父様(被相続人)/80代/不動産賃貸業/配偶者あり・子供2人(うち息子F様[50代]が相談者)/総資産:3億500万円(不動産[貸付事業]2億5,000万円・不動産[住居]1,500万円・金融資産[預貯金]4,000万円)/負債:2,000万円
ご相談の背景・経緯
50代の息子様(F様)が、80代のお父様が所有・管理する賃貸用不動産についてのご相談に来られました。お父様はご高齢ながらも現在お元気で自ら物件の管理を行っていますが、F様には以下のような漠然とした不安がありました。
建物の老朽化が進んでおり、数年以内に大規模な修繕が必要になりそう。
もし父の判断能力が低下した場合、修繕の契約や多額の借入の判断を誰がどうやって行うのか分からない。
今すぐではないが、将来に向けて何か準備しておいた方がよいのかを知りたい。
後日、お父様ご本人とも面談を実施しました。するとお父様からは「今は自分で判断できているが、これから先は息子に任せていきたい」「何かあったときは家族の中で対応してほしい」「制約が多いと聞く『成年後見制度』はできれば使いたくない」という率直なお気持ちをお伺いできました。お父様ご自身も、自分が元気なうちに家族へバトンタッチする体制を整えたいと強く望まれていました。
専門家のポイント解説
本件のように「今は元気だが、将来の不動産管理や資金調達に不安がある」というケースでは、制度ありきではなく、ご家族のお気持ちと不動産の将来的な課題を整理することが重要です。当事務所では以下の対策をご提案しました。
1. 将来の修繕と資金調達の壁の共有
賃貸物件の状況から、いずれまとまった修繕費が必要になります。その際、金融機関からの新たな借入れが必要になる可能性がありますが、お父様の判断能力が低下してからでは、修繕工事の契約も融資の契約もできなくなってしまいます。「判断できるうちに、今後の借入れについても整理しておく必要がある」という課題をご家族と共有しました。
2. 家族信託による管理体制のバトンタッチ
お父様の「息子に任せたい」「成年後見は避けたい」というご希望を叶えるため、「家族信託(民事信託)」の活用をご提案しました。
委託者(財産を預ける人): お父様
受託者(財産を管理する人): 息子様
受益者(利益を受け取る人): お父様
この仕組みにより、家賃収入はお父様が受け取り続けながら、賃貸経営の継続、修繕の契約、借入れの判断などの「管理・処分権限」を息子様に移行させることができます。
3. 融資・借入の早期検討と実行
家族信託の組成と並行して、将来の修繕を見据えた資金調達についても「お父様に判断能力がしっかりある今のうちに、借入れを検討・実行していく」という方針で話がまとまりました。信託の仕組みと金融機関からの借入れをセットで整えることで、将来のあらゆるリスクに備えた万全の不動産経営体制が完成します。
お客様の声
【ご相談者:息子様(F様)の声】
父は昔気質で、今も元気にアパートの管理をしていますが、建物のあちこちが傷み始めているのを見て、「もし父が認知症になったら、大規模修繕のお金を誰がどうやって銀行から借りるのだろう」と漠然とした不安を抱えて相談に行きました。
専門家の方に間に入ってもらい、父の「いずれ息子に任せたい」という本音を初めてしっかり聞くことができました。家族信託という仕組みを使えば、父の想いを尊重しながら私が管理を引き継ぐことができると分かり、将来の大きな不安がスッと消えました。
【お父様の声】
まだまだ自分でやれると思ってはいましたが、周りで認知症になって苦労している大家さんの話を聞くようになり、息子にどう引き継ぐべきか悩んでいました。成年後見人という他人が家族の財産に口を出してくる制度には抵抗があったので、家族信託で息子に管理や修繕の判断を任せられると聞いて安心しました。元気なうちに銀行の借入れも含めて道筋をつけられたので、これからは安心して息子に任せ、のんびりと過ごしたいと思います。