顧客概要
L様(被相続人)/80代/地主/配偶者あり・子供2人・養子1人(家族関係は良好)/総資産:5億円(不動産[貸付事業]4億円・不動産[住居]3,000万円・金融資産[預貯金]5,000万円、[有価証券等]2,000万円)
ご相談の背景・経緯
L様は、先祖代々の土地を含む複数の不動産を所有する80代の地主様です。ハウスメーカーからのアドバイスをきっかけに、「将来の財産管理について一度整理してみてはどうか」と考え、当事務所の面談にお越しになりました。
これまで、不動産の管理やさまざまな経営判断はすべてL様ご自身で行ってこられましたが、ご年齢のこともあり「判断が必要な場面が今後さらに増えていく中、管理を誰が担うのか」「できれば元気なうちに、家族の中で対応できる体制を整えたい」とお考えになったのが発端です。
当初のご相談は、相続対策や遺言書の作成を目的としたものではなく、あくまで「これから不動産をどのように管理していくか」という点にありました。
専門家のポイント解説
本件のように「まずは日々の管理をどうするか」というお悩みからスタートし、段階的に制度の全体像を整理していくアプローチは、ご本人に納得して対策を進めていただく上で非常に重要です。当事務所では以下の順序で整理とご提案を行いました。
1. 家族信託による不動産管理体制の構築
まずは当初のご希望である家族に管理を任せる体制を形にするため、家族信託の活用をご提案しました。L様を委託者(兼 受益者)、ご家族を受託者とすることで、家賃収入はL様が受け取りつつ、日々の不動産管理や契約実務をご家族に引き継ぐことができます。
2. 信託の出口帰属権利者の決定から承継を考える
家族信託の契約を設計する際、「誰が管理するか」「どの財産を信託するか」に加えて、「信託が終了した後(L様がお亡くなりになった後)、その財産を最終的に誰が取得するのか(帰属権利者)」を決める必要があります。この設計上のルールをご説明したことをきっかけに、単なる管理の話から将来の承継(相続)の方向性へとL様の意識が自然とシフトしていきました。
3. 家族信託+遺言書の併用
帰属権利者の検討を進める中で、今度は「では、信託に入れなかった財産(日々の生活費用の預貯金やその他の資産)はどう扱うのか」という新たな課題が生じました。
信託財産以外の扱いを整理し、承継全体に漏れがないようにするためには遺言書の併用が有効です。そこで、家族信託で不動産の管理体制を整えつつ、遺言書を作成して信託外財産の扱いや全体としての承継方針を補完する形に着地しました。
「遺言を書きましょう」と最初からお勧めするのではなく、必要な管理の仕組み(信託)を順を追って整理していった結果、ごく自然な流れで遺言作成という総合的な対策に行き着いた事例です。
お客様の声
最初は「自分が歳をとってアパートや土地の管理ができなくなったら困るから、子どもに任せる方法を知りたい」というだけで、遺言書を書くつもりは全くありませんでした。相続のことは「まだ先の話」と思っていましたし、子どもたちの仲も良いので揉めることはないだろうと考えていたからです。
しかし、専門家の方と一緒に家族信託の仕組みを作っていく中で、「私がいなくなった後、信託したこの土地は最終的に誰の持ち物にするか」「信託に入れていない預金はどうするか」を今のうちに決めておかないと、結局子どもたちが困ることになると気づかされました。
無理に遺言を勧められるのではなく、話を進めるうちに「遺言も一緒に作っておいた方が安心だ」と私自身が納得して決断できました。先祖代々の土地の管理から相続の道筋まで、綺麗に整理できて本当に晴れやかな気持ちです。